Abstract | 1)はじめに 血液にかわって酸素を末梢組織まで運搬することができる輸液剤, いわゆる人工血液の開発において, 酸素易溶物質であるperfluorochemicals(PFC)が注目されるようになったのは1960年代後半になってからである1〜4). 1968年われわれが研究を開始して以来5), 1970年代は主としてわが国で研究, 開発されてきたPFC乳剤は, われわれとミドリ十字との共同研究のもとに世界で先がけて臨床応用可能なところまできた6〜23). ここではPFC乳剤開発の歴史とその時々の問題点を述べ, 現在臨床使用されている乳剤の性状と限界を明らかにする. 2) PFC乳剤有効性の証明 元来冷媒などの工業用に合成されたPFCの酸素溶解能に注目し, 生物界への応用を考えたのはシンシナチ大学のクラークら1), ペンシルバニア大学のスロビターら2,4), ハーバード大学のガイヤーら3)である. 彼らはいずれも自身のPFC乳剤の有効性を一応証明しているが, 血液ガス分折や循環動態測定を行い, 末梢組織の酸素消費量などよりPFC乳剤の酸素運搬能を直接検討するまでにはいたらなかった. |