Abstract | 近年, 多発外傷患者の増加, 開心術適応の拡大などに伴い, 輸血に使用される血液の需要が高まっているが, 供給量は必ずしもそれに平行していない. 輸血に伴うB型肝災の罹患頻度は輸血量が多いほど増すわけであり, わが国のように1単位が200mlの場合には欧米に比較して2.5倍危険性は高くなる. エホバの証人という宗教では他人の血液の使用は絶対的禁忌である. 輸血が必要とされるときに血液が常にすぐ入手できないことも多く, ことにまれな血液型の場合には大きな問題となる. 術中の出血量を減少しようとする試みとしては, 低血圧麻酔法や術前採血による血液希釈法などがあり, それぞれある程度の目的は果たしている. 白い血液と注目される人工血液のPFC乳剤の開発, 研究そして臨床応用も進行しており, その将来を大いに期待する1人であるが, ルーチンに使用できるにはまだ歳月が必要であろう. 自家輸血装置使用による自家輸血(autotransfusion)は, わが国ではあまり応用されていないが, 米国では10年前くらいから試みられ始めてこの5〜6年でかなりの普及をみ, 現在では筆者の勤務しているアイオワ大学病院を含めて開心術施行時にはほぼルーチンのものとなってきている. |