| Abstract | はじめに カルシウム（Ca）イオンの細胞内への流入を抑制する薬物であるCa拮抗薬の心筋代謝に対する作用を論じる際には, まずCaイオンそのものの心筋代謝における役割について理解する必要がある. そもそもCaイオンは, 生体の情報を細胞に伝達し, 細胞内の代謝機能を調節している重要なイオンで, とくに筋肉の収縮, 分泌腺からの分泌, 神経伝達物質の放出および代謝系酵素の賦活などに関与している. すなわち, 蛋白と結合していない遊離の型のCaイオンは細胞内外に100倍以上の大きな濃度勾配をもって存在し, これらの組織では, 刺激発生時に細胞内に流入し, そこで刺激に応じた反応を出現させる. たえず収縮と弛緩を繰り返し, 速い代謝を行っている心筋の機能調節には, とくにこのような細胞内外のCaイオンの動態が重要で, その平衡が崩壊すれば心筋の機能と形態を正常に保つことはもはや不可能となる. そこで本稿では, まず心筋におけるCaイオンの動態とその心筋代謝調節に占める役割について述べ, つぎにCaイオンの流入を抑制するCa拮抗薬の心筋代謝に及ぼす影響について, 虚血を中心とした心臓の病態生理とも関連させて生化学的立場より考察したいと思う. |
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