Abstract | 生理学の分野では脳の各部に電気刺激などを行ってECG変化が起こることが詳細に検討されている. これらの実験は中枢疾患によって起こるECG変化の機序を知るうえで重要なことであるが, 臨床上ではたとえば脳外傷によって血腫が生じた場合など脳のどの部位が刺激されているかを知ることは困難であって生理学の知識をただちに当てはめることはできない. ECG変化の機序を臨床面から知りうる場合としてはごく小範囲の脳塞栓や脳出血などむしろまれな場合である. 本稿の目的の第1は中枢疾患の病態を通して不整脈の発生機序を考察することであるが, 第2に, 頭蓋内にいわゆるspace occupying lesionが生じた場合には脳ヘルニアによる脳幹損傷の有無が予後を完全に左右するので(内田, 1968. 表1), 脳幹障害とECG変化との関係を検討することもきわめて重要であると考える. 「1. 実験的脳刺激と不整脈」動物実験では脳各部の電気刺激(Mauckおよび表 2), 頭蓋内圧上昇(Gonzalez, Blasher), cerebral concussion(Evans), subarachnoid hemorrhage(Estanol, 1977)など種々の刺激方法によるECG変化観察の報告があるが視床下部, 脳幹部はもとより古皮質などでも不整脈が発生する(表2). |