Abstract | 「はじめに」Wolff-Parkinson-White(WPW)症候群は, 心臓の刺激伝導系に異常な副刺激伝導路が存在するために, 頻拍発作がしばしば出現する疾患である. 頻拍発作は心拍出量を低下させるほかに, ときには心室細動に移行する危険がある. WPW症候群を合併した一般手術患者の麻酔では, 頻拍発作の防止対策が問題とされている. 一方, WPW症候群の外科的根治術である副刺激伝導路切断術1, 2)(以下副伝導路切断術)の麻酔では, 術中に行われる副伝導路の部位診断が成否の鍵となるために, 副伝導路の機能を温存しておくことが要求される. 本稿では, 106例の副伝導路切断術の麻酔経験にもとづいて, I. WPW症候群の病態生理, II. 副伝導路切断術の麻酔管理(主として副伝導路の機能温存問題), III. WPW症候群を合併した一般手術患者の麻酔管理(主として頻拍発作対策)に分けて述べる. 「I. WPW症候群の病態生理」「1. 副伝導路と心電図所見」現在まで種々の副伝導路の存在することが知られている3)が, 紙数に制限があるので房室間副伝導路(いわゆるKent束)によって生ずる一般的なWPW症候群を中心にして論ずることにする(図1). |