Abstract | 「1. はじめに」ヘパリン(以下Hepと略記する)は抗凝固活性(血液凝固阻止活性)(anticoagulant activity)や脂血清澄活性(lipolytic activity;lipemia clearing activity), その他多彩な生物活性をもつ1)ため, 発見(1916年)以来興味ある研究対象となり, 研究報告も枚挙にいとまがない. 筆者らはさきに, 1978年初期ころまでの研究成果をまとめ, 単行本として出版した2). その後のHep研究の進歩はめざましく, 特に抗凝固活性と構造との関係の研究は核心に迫りつつあり, 1982年初期までの研究成果のうち, Hepの生合成と抗凝固活性の機能領域に関するおもな知見を“みにれびう”の形で紹介した3). 本講座では, Hepの作用機序として, 抗凝固活性発現に関する最近の知見の概要を紹介する. 「2. HepのアンチトロンビンIIIに対する結合領域」凝固因子であるセリンプロテアーゼ類(XIIa, XIa, IXa, Xa, VIIaなどの各因子, 以下因子の記載を省略する)は血液中のそれらに対する生理的阻害物質であるアンチトロンビンIII(別名heparin cofactor I)(以下ATと略記する)によって阻害されるが, この阻害反応はHepによって飛躍的に促進される4). |