Abstract | 「はじめに」開心術の成績は, 過去10年間に著しく改善され, 以前には手術不能例として取り扱われていた症例にも適応の拡大が成されつつある. その主たる理由のひとつに, Melrose1)により導入された“elective cardiac arrest”なる概念が25年以上経た今, 安全にしかも安定した補助手段として確立されたことがあげられる. しかしながら, これらの心筋保護法も完全なものではなく, 術前より存在する心筋障害などに対しては, さらに改良を加える必要があることは言うまでもない. 一方, Fleckensteinら2)により, 虚血心筋障害のkey mechanismが細胞内Ca overloadingであると指摘されて以来Caの動きと虚血細胞障害という見地から心筋保護法が論ぜられ, Ca拮抗剤の心筋保護領域への応用3〜7)が試みられ, 各施設がその実験的および臨床的効果を報告している. しかしながら, Ca拮抗剤が有効か否かに関しては未だ意見の一致をみていない. 本稿においては, Ca拮抗剤を心筋保護液に付け加えるか否かについて, われわれの成績を中心に論じてみたい. |