Abstract | 「I. はじめに」微小循環領域にける血流異常の要因として, 血液粘度, 赤血球変形能などの血液レオロジー的因子の異常は, 以前から注目されてきた. 多発性骨髄腫, 原発性マクログロブリネミアなどの症例に認められる高血液粘度症候群hyperviscosity syndromeは, 異常蛋白の増加による血清粘度および赤血球集合の亢進による血液粘度のそれぞれの上昇によって惹起されることは周知のとおりである. さらに, 最近は, 各種の血栓症, 心筋梗塞, 糖尿病, 鎌状赤血球症, レイノー症候群など多彩な疾患において, 血液粘度の上昇が認められ, 血液レオロジー的因子と発症の要因あるいは病態との関連が注目され, 種々の検討が加えられてきている. しかし, 粘度, ずり速度, ずり応力などの術語は, 一部の専門家を除いて一般にはなじみの深いものではない. また, 血液粘度の測定も比較的容易であるにもかかわらず, 広く実施される現状には至っていない. ここでは, 血液粘度の測定法の原理と実際, さらに血液粘度測定の臨床的意義について, できるだけ平易に説明し, 今後多くの臨床の場において粘度測定が行われることを期待して, 解説することとしたい. |