Abstract | 心臓外科領域では, 循環管理の関心の大部分は, 術中, 術直後の極く短い時間帯に集約されている. 何故ならば, 術中の体外循環の経過中, およびその終了直後の3〜4時間の血行動態上の粗大な現象が, 許容される範囲にとどまり得るかどうかによって, 手術の成功, 不成功が左右されるからである. 体外循環離脱直後の時期では, 一過性で, 可逆的な循環虚脱に陥ることが多い. またその状態が長く続くと, LOSと呼ばれ, カテコールアミンの投与, 補助循環などにより, 心臓のポンプ作用を強力に補助することも, 稀ならず経験することである. このような術直後にみられる急性心不全の原因, 病態は多彩であり, 不明であることが多い. 時には術前の心不全が, 外科治療を行ったにも拘わらず, そのまま持ち越されて, 術後重篤化する場合もある, また新たに, 術中心筋梗塞や, 心筋の収縮の不全を併発する場合もあり, その対応は複雑である. これらのポンプ失調の状態は, 重いものでは, 右心の著しい拡張と, 肺動脈圧の上昇とともに, 左心の収縮不全となり, 強力な薬剤治療, 機械的補助循環を要する. |