Abstract | 「1. はじめに」閉塞性脳血管障害の外科治療は, 出血性疾患に比べて, 歴史は比較的浅く, Eastocottによって頸動脈血栓内膜切除術(carotid endarterectomy)が報告されたのが1954年であった1). 一方頭蓋内への血行再建への試みは, Yasargilが1969年報告した, 浅側頭-中大脳動脈皮質枝吻合術(ST-MCanastomosis)が最初である2). 最近は頭蓋内動脈に各種の動脈枝が選ばれるため, 頭蓋外・頭蓋内バイパス術(EC/IC bypass)と総称されており, 盛んに行われている. 閉塞性脳血管障害の麻酔の対象となる疾患は, このように頸部内頸動脈狭窄もしくは閉塞症, 脳梗塞や“もやもや”病などがある. また大動脈炎症候群に対する頭頸部血行再建術3)の麻酔などもあるが, 今回は, 脳梗塞, 頸動脈血栓内膜切除術, “もやもや”病の麻酔について話を進める. 「2. 脳梗塞」脳梗塞は発症時より経時的に病態が変化する. この病態の時間的変化を総合的に捉えた報告は少ないが, 水上, 河瀬らによる, 比較的明快な記載があるので参考にされたい4, 5). |