Abstract | 「緒言」重症呼吸不全患者に対する人工呼吸管理の手段としてPEEP(Positive end-expiratory pressure)が有効であることを, Ashbaugh1)らが報告して以来, PEEPは臨床の場で広く利用されている. PEEPは, 呼気終末に陽圧をかけることにより, (1)機能的残気量の増大と(2)身内シャント率の低下により, 動脈血酸素分圧の上昇をもたらし, 組織への酸素供給を増加させるという利点があるが, その反面, 循環系には抑制的に作用して心拍出量の低下を起こしうるという欠点がある. 呼吸不全の原因, 病態が多種多様であるように, PEEPによる心循環系への作用機序は単純なものではなく, 複数の因子が循環抑制に寄与していると考えられる2-5). 本稿に於ては, 循環器系への作用機序について文献的に考察し, PEEPを実際に使用する場合の問題点となる至適PEEP, 呼吸管理中のモニタリング, PEEPの循環抑制に対する薬物療法などについて概説する. 「I. PEEPの心・循環系に及ぼす影響」「1. 心拍出量に及ぼす影響」心拍出量を左右する主な因子は, (1)心の前負荷(2)心の後負荷(3)心の拡張性(4)心筋収縮性である. |