Abstract | 各種弛緩薬の循環器系に及ぼす影響は(1)末梢自律神経系に対する興奮及び抑制作用, (2)ヒスタミン遊離作用, (3)神経筋接合部の脱分極作用にもとづく血漿カリウムの変化, などが反映されることが多い. 以上のことが原因となって末梢血管抵抗, 静脈容積, 心筋収縮力, 心拍数, 及び心律動に変化をもたらし, それが単独または重なり合って循環器症状となって現れる. 1)2)「I. 循環器系の症状」(1)末梢自律神経遮断作用 筋弛緩系の多くの循環器系の作用は自律神経系のニコチン及びムスカリン受容体の興奮及び抑制のいずれかに基づく. 例えばサクシニールコリン(S. C. C)はコリン受容体においてアセチールコリン(Ach)の作用を助長し, 非脱分極性筋弛緩薬はAchの作用を阻止するように働く. 筋弛緩系の循環器系に及ぼす影響はそれらの化学構造がAch分子とよく似ていることからも説明出来る. S. C. Cのコリン受容体部位に於ける刺激作用は, S. C. CはAchの2分子をアセテートメチル基で連結していることにより, またパンクロニウム(PCB)は化学構造上もっともよくAchと似ており, PCBのステロイド核は丁度Achに相当するものと考えられることから迷走神経遮断作用及びコリンエステラーゼ阻止作用をもつものと理解されている. |