Abstract | 「はじめに」1960年代初頭から, ホ乳類の心房細胞内に特殊顆粒が存在し, これらが, ペプチドホルモン産生細胞に認められる顆粒と形態学的に極めて類似していることが知られていた1). しかし, その生体内での役割については未知のままであった. 1979年, deBoldは, 食塩負荷や絶水したラットでは, この心房性特異顆粒が増減することを報告2), さらにラット心房の抽出物を別のラットに静注すると, 著しい利尿および尿中への電解質排泄が促がされることを明らかにした3). 以来, 心房の特異顆粒にはナトリウム利尿作用を有する未知の因子が存在し, 体液の容量調節に関して重要な役割を担っていると考えられ, また本態性高血圧と腎臓におけるナトリウム排泄能とを関連づける可能性を持つ物質として注目されていた4). 多くの研究グループがこの未知の因子の探索, 同定に意欲的にとり組んでいたが, 最近これらの生化学的研究により, ヒトおよびラットの心房から, ナトリウム利尿作用を有するペプチド性ホルモンの単離, 精製, 構造決定が行われると同時に, これらの前駆体のcDNAの塩基配列も報告され, 構造の全ぼうがほぼ明らかとなった. |