Abstract | ファーマコキネティックス(pharmacokinetics)とは, 生体内に投与された薬物の質的量的変化の過程を研究する学問である. 平たく言えば, 薬物の分布・代謝・排泄の過程を薬物(あるいは代謝産物)の血中濃度, 組織内濃度および尿中排泄量の時間的変化を把えようという学問なのである. 本稿では主に, 血中濃度の時間的推移をコンパートメント理論1)2)3)4)(compartment theory)にそって薬物動態解析(pharmacokinetic analysis)を行い, その動態値を利用して実地治療上の薬物投与法(量・間隔・投与部位)に役立てるための基礎理論(pharmacokinetic principle)について記載する. さて薬物の血中濃度を測定することがなぜ実地治療上に役立つかという疑問がある. これは治療上投与された薬物の効果判定が客観的に血中濃度という面から可能になることがあるからに他ならない. かつては投与薬物量と薬物効果という関係でのみ把えていたのが一歩押し進められて血中濃度を測定して, 薬物効果を推定するという考え方に変わって来たからである. この基盤には以下の考え方が存在する. |