Abstract | 心臓にはβ−受容体が存在し, 陽性変力作用, 陽性変時作用, 神経伝達速度の促進, 心筋の興奮性亢進に関与している. そこで, 急性心不全, 心原性ショックに際しては, 心筋収縮力の低下を治療する目的でドパミンやエピネフリン, ドブタミンなどのβ−agonistが使用されてきた. しかし, β−受容体刺激は心筋の収縮力をたかめるが, 一方では心拍数をふやし, 心筋の興奮性をたかめ, 不整脈を誘発し, また長時間にわたり使用すると薬物耐性を生じるなどのために使用上の制約があった. 1966年, Wenzel and Su1)は心臓にはβ−受容体のみならず, α−受容体の存在することを明らかにした. それまではα−受容体は主として末梢血管系や中枢神経系において検討され, 心臓における役割りは明らかでなかったのである. 彼らはラットの心室筋条片でphenylephrineが陽性変力作用を示すことならびにそれがα遮断薬であるphentolamineによって消失することを示した. その後α−受容体はヒトを含め, ブタ, ウサギ, ラット, モルモットなどの哺乳類の心房心室で証明されるようになってきた2)が, 何故か, イヌではその存在ははっきりしないようである. |