Abstract | はじめに 心不全患者において, 労作時の息切れと運動制限は最も高頻度にみられる症状であり, 患者の日常生活を規定する重要な因子である. しかし, 安静時の心機能指標, すなわち心拍出量や駆出率などは自覚症状や運動制限の程度と相関せず1), 心不全の重症度を評価する上で必ずしも妥当ではない. したがって心不全例では運動負荷試験が必需であり, そこから得られる諸指標の心不全評価への応用について検討することは極めて重要である. 心疾患患者は心機能低下により活動筋への酸素供給が不足し, 運動耐容子が低下していると考えられており, 心疾患患者の心機能を評価する一つの指標としてAnaerobic threshold:ATが最近注目され, 臨床に応用されている1〜5). 運動負荷において運動強度が増加し, 運動筋における必要なエネルギー産生が, 供給される酸素を利用する有気的代謝だけではまかないきれなくなると, 無気的代謝がこれに加わることになる. この時点における酸素摂取量または運動強度をATと呼び, 細胞内での乳酸産生が急に増加し, 重炭酸塩(NaHCO3)を主体とする緩衝系の作用によりCO2産生が増加してその結果換気が促進されてVEが増加する. |