Abstract | はじめに 心筋虚血急性期および再灌流時にしばしば致死的となる心室性不整脈が出現することは周知のごとくである. このような不整脈発生のmechanismそしてそれに対する薬物の効果に関してはこれまでいくつかの研究がなされてきているが, 多くの実験は麻酔下動物または摘出心を用いて行われたものである. 麻酔剤の使用, 機械的呼吸補助, 脱神経支配が虚血中や再灌流中の心筋障害の程度に, 何らかの影響をおよぼすと考えられ, 事実諸家ら1), 2)の報告によると, 麻酔の導入が不整脈発生頻度を変化させると言われている. 今回はこのような麻酔下と非麻酔下での虚血中または再灌流中での不整脈発現性(arrhythmogenesis)の差違について, いくつかの実験結果を踏まえて検討した. 1. 交感神経系の影響 交感神経系の変化が冠動脈閉塞直後に発生する不整脈の重症度に何らかの影響を及ぼすと言われているが, その機序については今だ明らかではない. Ebertら3)は雑種成犬を用い20分間の左冠動脈前下行枝(LAD)結紮を行い, この間の心室細動(VF)の発生に対するcardiac denervationの効果を検討した. |