Abstract | 冠動脈スパズム(coronary artery spasm, 以下スパズム)は安静時狭心症の原因とされ, 冠動脈の過剰収縮反応により生じると考えられており, 多くは粥状硬化を伴なっている. スパズムの原因はいまだ不明であるが, 表1に挙げたような誘発因子が知られている. 診断としては循環動態の変動(心拍数増加, 血圧上昇, 不整脈)がないにもかかわらず, ECG上突然のSTの上昇が認められる時, 心筋虚血の原因として冠動脈スパズムが疑われる. しかし, 冠動脈造影中と異なり, 全身麻酔下の手術中でのスパズムの診断は困難である. 診断基準として海江田はST上昇>2mm(開心術時), あるいはST上昇>1mm(非開心術時)としており, これが一応の参考になるが, 症状との総合的判断が必要である1). 症状としては突然の血圧低下, 心室性不整脈(期外収縮, 二段脈, 頻拍), 房室ブロック, 心拍出量減少などが認められる. 多くは一過性で, 時には反復する. 麻酔中のスパズムの発生頻度は冠動脈バイパス術中が最も高く, 1〜2.5%とされ1〜4), その死亡率は20〜30%と高い数値が報告されている1, 3). |