Abstract | 本誌の表題である循環制御は極めて広い意味および応用範囲を有するが, 20世紀後半, 循環の最も人為制御に成功した手段の1つは開心術であろうと考える. 先天性および後天性心疾患患者の予後が保存的療法の限界に達した症例に対して開心術により心内修復を行い社会復帰あるいは救命の恩恵に与った人々はすでに無数といって過言ではない. 開心術について, 一貫して臨床上, 制御の問題点は開心術後低心拍出量症候Low cardiac output syndrome(LOS) after open cardiac surgeryの発生であろう. 私は心臓外科に係わって以来, 主としてこの問題につき研究し, 本誌にも総説として執筆したので思い出が深く, かつ現在なおこの制御には種々手段が用いられ, 益々多方面の技術を導入しての研鑽が積まれている. LOSは元来, 開心術後の心臓自体の急性機能低下による循環不全の用語であるが, 現在では発生原因には関係なく, 一次的に心臓に原因した心拍出量の急性低下状態に用いられている. LOSの用語が初めて文献に現われたのは1966年Coffinの論文である. 翌, 1967年, Cardiac Surgeryの成書にRC Lilleheiらがこの問題を記載し, 以後, 心臓外科医にLOSとして常用的用語となった. |