Abstract | 房室ブロックは房室結節のみならず房室伝導系の各所で生じることが知られているが通常の心電図では単に心房(P波)と心室(QRS波)のみの情報しか得られないため, 臨床的に伝導途絶部位を正確に把握することはきわめて有用であるにもかかわらず, 最近まではこの点に関しては必ずしも十分とはいえなかった. しかしながらHis束電位図の出現により臨床的にブロックの部位を容易に知ることができるようになり, その結果各部位でのブロックの特徴が明らかになり治療上にも有益な情報が得られるようになった. 以下自験例を中心にHis束電位図により房室ブロックを分類しそれぞれの特徴を検討してみることとする. 「1. ブロック部位別頻度」房室ブロックは図1に示す如く一般的には房室結節, His束, 両脚の各部位で起こり夫々A-Hブロック, BHブロック, H-Vブロックと呼ばれる. 表1は著者らの経験した高度(伝導比2:1以下)および完全房室ブロック160例における各ブロックの頻度であるが, A-Hブロック24%, BHブロック38%, H-Vブロック38%であり房室ブロックの3/4はHis束以下でのブロックであり, 中でもHis束内でのブロックがH-Vブロックとほぼ同程度に認められ従来考えられていた以上に高頻度である点が注目される. |