Abstract | 「はじめに」臨床電気生理検査法の進歩とともに不整脈の機序解明が進み, その原因を抜本的に治療する外科治療が可能となった. この外科治療は1968年のWPW症候群に対する副伝導路切断術に始まり1), その後適応が拡大され現在では心室性頻拍, 心房性頻拍, 房室結節リエントリー性頻拍, 頻脈性心房粗細動が手術対象となっている. そこでいくつかの問題を取り上げ外科治療の最近の進歩につき述べる. 「I. WPW症候群」「1)心内膜アプローチと心外膜アプローチの何れを選択するか?」副伝導路切断術は岩ら2)が開発した心内膜アプローチが世界のルーチンの術式として普及している. 筆者らはこの術式を348例に用い高い根治率と安全性を確認している3). 一方Guiraudonら4)は冷凍凝固を用いた心外膜アプローチを考案, 体外循環を必要としない術式として紹介している. この術式では手術侵襲が少なく, 原則として輸血を必要としない(ただし心内膜アプローチにおいても, 成人例であれば自家血のみで手術可能である). しかし胸骨正中切開で心臓に到達し心外膜アプローチを行う際, 左心側の副伝導路に対しては体外循環下に心臓を脱転する必要がある. また心内膜アプローチと異なり中隔型, 心疾患合併例への応用には限界がある. さらに組織が脆弱な症例(特に高齢者)では房室間溝からの大出血をきたすことがあるとされる5). |