Abstract | 「はじめに」心電図学の成書は数多いが, 診断学に重点がおかれており, モニタリングに関する事項は軽視されがちである. 診断とモニタリングを区別することには異論があるかもしれない. しかし, モニタリングでは, 図1に示すような双極誘導を用いることが多く1), 診断用の誘導法とは異なっている. また, モニタリング用の心電計は, 基線の安定化をはかるため, 時定数が1.5秒以下(診断用は3.3秒)に設定されており, その波形には若干のひずみが生じている, したがって, モニタリング用心電計で判読できる項目は, (1)心拍数, (2)不整脈, (3)STセグメントの3者が主なものであり1), 診断用心電図にくらべ制限を受ける. しかし, モニタリングでは時間経過が加味されるため, 数少ない項目からでも, 診断用とは異なった有用な所見が得られる. 本稿では, 上記の3項目に焦点を絞り, 手術室および集中治療室での心電図モニタリングについて, 現況と将来への展望を述べる. 「1. 心拍数」現在のモニタリング用心電計は, R波を認識して心拍数を表示する. 心拍数自体も重要な生体情報であり, その異常には原因の追求と対処が必要である. しかし, 多くの場合, R波の頻度をそのまま記録してみても, 図2-Aのように, 特別なことは見い出せない. |