Abstract | 見逃されがちであった血管内皮細胞の機能に近年注目が集められている. 1980年, アセチルコリンの血管弛緩作用が血管内皮由来血管弛緩因子(EDRF)に依存していることがFurchgottらによって示されて以来1), 血管平滑筋トーヌスの調節においても内皮細胞が果たす役割が重視されている. 現在ではアセチルコリンだけではなく, 多くの化学的刺激及び物理的刺激がEDRFの生成を促すと考えられている. 最近Moncadaらが, EDRFの本体は一酸化窒素(nitric oxide)またはそれに近い亜硝酸化合物であり2), 内皮細胞においてL-arginineから生成される3)と報告している. つまり, 古くから用いられてきた亜硝酸薬に対応する内因性物質とでも言うべき物が血管内皮細胞で作られていたことになる. 一方, 内皮細胞が血管収縮に果たす役割にも注目が集まり, 1982年, Vanhoutteらによって血管内皮由来血管収縮因子(EDCF)の存在が示唆され4), 以後多くの研究者たちがEDCFに注目をしてきた. その結果, EDCFは単一の物質ではなく, プロスタノイド, フリーラジカル, ペプチドなど複数のものからなっていると考えられている5)-8). 1985年, Highsmithらはウシ大動脈内皮細胞培養上清中に血管収縮活性を見いだし, その活性はペプチダーゼで処理すると消失すると報告した9). |