Abstract | 「はじめに」心臓の主たる働きは血液を駆出するポンプ作用にある. そのためには, 十分な心内圧を生じさせるのに必要な局所心筋の順序正しい同期的かつ能率的な収縮と, すみやかな拡張が必要となる. もし局所心筋が同期せずに収縮したり, 局所的に心筋発生張力の差が生じると, 心収縮の不均等が起こり, それがさらに重症化するとポンプとしての効率が減少し, ポンプ機能不全に陥る. その極端な例が心室細動である. 心室細動では, 心筋は収縮している(心筋機能としてはゼロではない)にもかかわらず, 心筋収縮の同期性, 均等性がまったく失われ, 心室からの血液駆出がなくなってしまう(ポンプ機能としてはゼロ)状態にある. このような極端な例は別としても, 心収縮の不均等がみられる例に心筋梗塞や狭心症などの虚血性心疾患, 拡張型心筋症や心筋炎, 心室内伝導障害などがある. 本稿では虚血性心疾患にみられる心収縮の不均等性に焦点をあて, その評価法, 動物実験から得られる情報とその臨床的意義, 将来の展望などに言及する. 「局所心筋の不均等収縮」心ポンプ機能を維持するためには, 局所心筋が局所心室壁にかかる応力stressが等しくなるように均等にしかも同期的に秩序正しく収縮することが重要である. |