Abstract | 「はじめに」虚血性心疾患(以下IHDと略す)の外科治療として冠動脈再建術(以下CABGと略す)が広く施行されている. CABG術後症例の年々の増加とともに, こうした症例が後に他の疾患によって一般外科手術を受ける機会も増加している. 将来CABG術後症例の10〜20%が一般外科手術の対象となることを予測する研究者もいる1). IHD患者の手術・麻酔に際しては, 軽易期梗塞(以下PMIと略す)などの合併症が多く, その術前評価や術中術後管理に細心の注意を要することは周知である. 一方, CABGが施行されている場合には, むしろ術後の心合併症の少ないことが報告され1-11), CABGはIHD患者の手術・麻酔のリスクに対して予防効果があると考えられている. しかし, 実際の周術期の管理にあたっては, IHDに対するCABGの効果, および冠動脈硬化の進行と術後経過期間の関係を把握することが極めて重要である. また, これらを評価するにあたりどのような検査が必要か, できる限り非侵襲的な検査がのぞましいか, それとも全例術前の冠動脈造影(以下CAGと略す)が必要かといった問題も解決されていない. 著者は自験例をもとに, CABG術後症例が一般外科手術を受ける際の術前評価について述べる. |