Abstract | 賛成・反対のふたつの視点からひとつの主題を眺め, それぞれの根拠となる科学的な事実や理論をぶつかりあわせ, 洗い出された全体像から聴衆がおのずとしかるべき結論めいたものを感じ取る方式の「Pro & Con」には, 特に欧米諸国で根強い人気があり, 最近わが国の医学会でも採用されるようになってきた. 循環制御医学会では今回が初めてである. この討論方式の特筆すべき点は自分が必ずしも, 例えば賛成と思わなくとも, 賛成の立場に立たされたらトコトン賛成論を唱えて議論を進めることである. 自分の本音でないことを主張することで, かえって物事の姿を客観的に見る手がかりができるようにも思われる. いつもいつもseriousに自説を主張し続けるよりも, 肩の力を抜いて冷静な議論を積み上げて見るのもよいものである. 今回は藤田会長の御発案で硬膜外麻酔を開心術の「主麻酔法」として使用することの功罪を論ずる事になった. 必ずしも非常に目新しいテーマとは言えないが, 臨床的にも理論的にも興味深い問題を抱えている. 開心術の麻酔法は吸入麻酔から麻薬(当初はモルヒネから最近ではフェンタニールないしその誘導体)の大量投与に主流が移り, そして最近では硬膜外麻酔を主役にした全身麻酔併用法が注目されるようになってきた. |