Abstract | 「はじめに」心臓内科の分野で診断装置として発展してきた心エコーはMモード, Bモードそしてカラーマッピングと進歩を遂げ, 今では診療や研究において欠くことのできない手法として確立されている. その一方でプローブの領域では1970年代前半に経食道心エコーが紹介されたが, 対象が意識下の患者でプローブの大きさなどの制限のために一般的に注目を浴びなかった. しかし1979年に松本, 丘ら1)により初めて経食道Mモード心エコーが麻酔科領域に導入されて以来, テクノロジーの著しい進歩とともに単に診断の手法としてだけではなく手術中の連続モニターとして広く普及しつつある. 経食道という新しいwindowが心エコー法の麻酔科領域への道を開いたといえる. 特に開心術においては将来, 心電図や肺動脈カテーテルと同様にルーチンのモニターの一つとして確立されるだろうと思われる. ここでは麻酔科の立場からみた心機能および弁機能の術中モニターとしての経食道心エコーの適用について概略を述べる. 「A. 左心室機能のモニター」「1. Global Left Ventricular Function」全般的な心機能の指標としてMモードによる左心室短軸径よりTeichholz, CubeやGibusonなどの簡便式を用いてもとめられた左室容積(左室拡張終期容積, 左室収縮終期容積)およびこれらから導いた一回拍出量, 心拍出量および駆出率などが用いられてきた. |