Abstract | 筋収縮・ホルモン分泌・神経伝達物質放出・細胞分裂・貧食などの細胞機能発現は, 細胞内における一過性のカルシウムイオン(Ca2+)の増加をシグナルとしている. 各種細胞現象のうちで, 横紋筋(骨格筋・心筋)の収縮に関していちはやくCa2+の重要性が見い出され, そのCa2+依存性制御機構が解明された. いっぽう平滑筋では, 横紋筋で明らかになったようなトロポニンCをはじめとするトロポニン複合体が検出されず, 従って横紋筋の制御機作についてはトロポニン複合体を介さない新たな検討が必要となった. 本稿では, 平滑筋収縮のCa2+制御機作, 及びその研究から発展した細胞生物学的成果について述べる. 「I. 横紋筋収縮のCa2+制御機構」本稿の目的である平滑筋収縮のCa2+制御機構を理解していただく為に, はじめに横紋筋収縮のCa2+制御機構について概説する. 横紋筋の格子状構造はHuxleyによる電顕写真であまねく有名になった. この格子状構造を模式化したのが図1Aである. Z帯により区切られた1つの格子状ユニットは, 太いフィラメント(ミオシンの束)と細いフィラメント(アクチンを中心とするミクロフィラメント)により構成されている. |