Abstract | 「1. はじめに」Angiotensin変換酵素(ACE)阻害薬はangiotensin IからIIへの変換阻害が主たる薬理作用であるが, Angiotensin IIは動脈系には直接, 静脈系には交感神経系を介して間接的に働き動静脈血管を収縮させるため, Angiotensin IIの合成阻害は末梢血管の拡張に働く. ACE阻害薬はkininase IIによるbradykininの不活性化も抑制するため, 血管拡張の機序としてkininkallikrein系の賦活化も関与していると考えられる. また, aldosterone, vasopressinの分泌を抑制し, Naや水の貯留も改善させる(図1). このため, ACE阻害薬は高血圧症治療薬として高い臨床的評価を得ている. さらに, ACE阻害薬などの血管拡張薬による減負荷療法が心不全治療に試みられその適応が拡大している. メルク社で開発されたenalapril(Renivace(R))は長時間作用型のACE阻害薬であり, 緩徐な作用とその持続性が期待される. 本稿ではenalaprilの心不全に対する効果に関し著者らの成績を含め紹介する. 「2. 薬理作用」Renivace錠は1錠中に2.5, 5, 10mgを含有するうすい桃色の裸錠である. 一般名はenalaprilで, 経口吸収が良好なマレイン酸塩であるがそれ自体は不活性であり, 活性代謝物はenalaprilat(enalaprilic acid)である(図2). また, SH基を構造に含まない点がcaptoprilと異なる. |