Abstract | 「はじめに」細菌性ショックに対する治療は, fluid resuscitationの概念の登場, 新しいinotropic agentsの出現, norepinephrineの再評価, 次々に開発された蛋白分解酵素阻害薬及びアラキドン酸代謝経路の酵素阻害薬の登場, さらには感染宿主の免疫学的防禦能や代謝・栄養面における新しい知見の治療的応用など, 歴史的にみて急速な進展を示してきた. しかし, 本病態の予後は極めて悪く, 現在でも様々な試みが臨床の場で行なわれている. また, 細菌性ショック治療の柱の一つであったステロイドの有効性についても疑問が投げかけられており, 再評価のための臨床試験が行なわれている. 一方で, こうした薬剤による治療の限界から, さらに積極に血液中のエンドトキシンや細菌の中和あるいは除去を行なおうとする研究が進んでいる. いずれにしても, 確立した治療法の無い現段階では細菌性ショックの処置と平行して, エンドトキシンの生体内流入を阻止するよう感染巣の開放・ドレナージ, 壊死組織の除去など外科的対応のタイミングを常に念頭におくことが最も重要である. 本稿では, 最近の研究におけるトピックスと今後の展望について, 私見を混じえて紹介したい. 「I. ステロイドの再評価について」感染性ショックの初期におけるグルココルチコイドの大量投与は, 急速に循環動態を安定化させることができるため, 現在まで基本的な治療法の一つとされてきた. |