Abstract | 心臓の正常興奮は, 本来の血液循環ポンプとしての心臓の機械的な性能を十分発揮させる巧みな現象の積み重ねである. 毎年心循環器系の薬理の講義で心臓の解剖・生理のまとめを最初にするが, そのたびにこの制御機構の面白さ, 病態生理理解のための必要性を医学生に充分伝える講義をしているかと自問するとともに, 未だ不思議に思っていることもある. 洞房結節で発生した興奮が心房を収縮させ, 房室結節では心房の収縮が終了したあとに心室を収縮させることにより, 心房, 心室の役割分担ができていることはよく知られている. この二つの特殊伝導系の結節には豊富な自律神経支配があることは, 心臓のポンプ特性の調節に心拍数を介する反応が重要なことを示している. 東北大学に在籍中, 房室結節の摘出標本での実験を手伝っていたが, 心房刺激の頻度を増加させると房室伝導時間が延長する反応をみて, 生体での交感神経興奮による頻脈の時と逆に伝導時間の延長が起こり, 自分の直感と違ってびっくりした記億がある. 現在では臨床電気生理試験が行なわれ常識になっているが, 20年も前のことである. この交感神経に助けられる頻脈に対する房室結節の反応に対して, 活動電位の持続時間は頻脈に対して心臓固有の機序で反応する. |