Abstract | Bradykinin(BK)は, アンギオテンシンIIとは異なり, 降圧性ペプチドである. 1949年M.Rochae Silvaにより蛇毒の降圧作用の研究から発見され, モルモット摘出回腸をゆっくり(brady)収縮させる(kinein)ことからこの名がつけられた. 図1のように9つのアミノ酸からなりC端, N端のアルギニンは何れも活性に必須である. BKを遊離する酵素kallikreinはドイツのミュンヘンのグループより発見され, 膵臓(kallikreas)由来と考えられこの様に命名された. 血漿から遊離される血漿キニン(kinin)としてはBKの他に, lysyl-BK(kallidin), methionyl lysyl-BKの3つがある. 何れも回腸, 気管支などの平滑筋収縮作用, 細動脈拡張作用, 血管透性亢進(血漿滲出)作用, 発痛作用(図1)が強いので, 炎症反応, ショックなどに関与すると考えられているが, 今までその証拠が充分でなく, 1970〜1980年代頃から次第に研究者の数も少くなってきた. しかし最近になってBK分解物の酵素免疫測定法の開発及びBK拮抗薬の登場と共に再び脚光を浴びようとしている. キニン系に関する詳細は文献1〜5)にある. 「1. キニン遊離機構」BKはヒスタミンの様に細胞内に貯えられているわけではない. 酵素のkallikreinが血漿中にあるkininogenに働いて初めてBKが産生される. しかし図2の様に酵素も血漿kallikreinと腺性(組織)kallikreinと二種類あり, 基質も高分子(high molecular weight, HMW)kininogenと低分子(low molecular weight, LMW)kininogenの二種あり, 血漿kallikrein+HMW kininogen→BK, 腺性kallikrein+LMW kininogen→kallidinと二種類が生体内で全く独立して作用している. |