Abstract | 「1. はじめに」脳浮腫は, 脳組織の水分の異常な増加による脳体積の増加した状態であり, その発生機序は複雑で今日なお未解決の問題が多い. 半閉鎖領域である頭蓋内での水分の増加は, 必然的に頭蓋内圧を亢進させ, 脳循環障害さらには脳代謝障害をひきおこす. これは一層脳浮腫を増悪させる連鎖を生じ, 脳ヘルニアの発生へと進展する. このように脳浮腫の発生は半閉鎖的な頭蓋内ゆえに重篤な病態を招く. 本稿では脳浮腫の分類およびその発生・進展因子について述べる. 「II. 脳浮腫の分類」脳浮腫には血液脳関門(blood brain barrier:BBB)の障害に伴って発生するものとそうでないものがある. 1967年, Klatzo 1)はそれをvasogenic edemaとcytotoxic edemaとして分類した. vasogenic edemaの特徴は, 血管透過性の亢進とそれによる血清蛋白の漏出である. 細胞間隙に水分成分の増加を認める. これに対してcytotoxic edemaは細胞膜障害に基づく限外濾液の細胞内への移動により細胞自体の腫張を惹きおこす細胞内水分の増加である. この分類に従えば, vasogenic edemaは脳出血, 脳腫瘍でみられ, cytotoxic edemaは脳梗塞, 一酸化炭素中毒等で認められる. その他, Manz 2)は水頭症でみられるhydrocephalic edema(interstitial edema)を加えている. |