Abstract | 「I はじめに」頭蓋腔はほぼ閉鎖腔とみなされており, その構成成分である脳と組織液, 脳血液量, 及び髄液の総和はほぼ一定である(Monro-Kellie doctorine). 構成成分相互間には代償機能が存在するが, 脳組織では細胞内・外の水分含有量, 血液系では脳血管床の変化に基づく脳血流量, 髄液系ではその産生, 吸収, 等の変化によって行われるとされている. 更に頭蓋腔は完全なclosed boxではなく大後頭孔を通じて脊髄にも通じており, また血管も頭蓋外とつながっている. いずれにしても頭蓋内圧は頭蓋内構成成分それぞれのもつ血管内圧, 髄液圧, 組織圧などがそれぞれ影響しあった動的な力の総和と考えられる1). 頭蓋内圧の亢進は上記頭蓋内構成成分の変化(脳腫瘍, 脳血管障害, 頭部外傷, 水頭症, 頭蓋内感染症等あらゆる頭蓋内疾患)で起こり得る. 頭蓋内亢進による脳損傷は主として脳の血流不全によって起こるとされている2). ここでは脳血管の自動調節(auto regulation), 頭蓋内圧亢進と脳血流, 脳圧迫虚血後の頭蓋内圧・脳血流・脳代謝の連関, 並びに頭蓋内圧亢進と圧液, 特に脳幹機能との関わり合い, 等について述べたい. 「II 脳血管の自動調節能」脳には「脳潅流の変化に対して脳血流を一定に保とうとする内部的(臓器のintrinsicな)機序3)」が存在し脳血流の自動調節能(auto regulation)と呼ばれている. |