Abstract | 「1. はじめに」生体における主な光吸収物質は水とヘモグロビンであるが, これらは共に近赤外領域で小さい吸収値を示すため, この領域の光は紫外・可視・赤外光などに比べ生体を良く透過する. この性質は生体酸素測定の分野で早くから注目され, 近赤外光を用いた様々な酸素モニタ法が開発されてきた. 2波長法やパルスオキシメトリ法などは代表例である. しかし, こうした装置は測定部位が耳や指先など組織の薄い所に限られており, 臨床上酸素測定が最も重要な頭部への適用には至らなかった. これは使われている光検出器の感度が低いため, 厚い組織を通って大きく減衰した微弱な光を測定できないと言う, 主に技術的理由によるものであった. 1977年Jobsis 1)は, 従来の装置構成を大幅に改善し, 光検出器に非常な高感度な光電子倍増管を, 光源にはレーザーダイオードを用いた, 頭部酸素モニタ装置を発表した. Delpy 2)らはこれをさらに発展させ, 実用レベルまで高めた装置を開発し新生児の頭部酸素モニタ3)を行っている. 今回紹介する近赤外線吸収装置(NIR-1000)は, Delpyらロンドン大学のグループと共同開発したもので, 上記装置の性能・機能を向上させ臨床現場での使用を可能にした頭部酸素モニタである. |