Abstract | 循環の研究には, 色々なアプローチがある. 解剖学的にその形態を観察することが, 出発となるが, その機能を調べるためには, 生理学的でなければならないし, 機能不全については病理学的に検討しなければならない. また, 生化学的, 薬理学的な面の検討も大きい領域である. しかし, これらの方法から一歩を踏み出して, 現象の意味を解釈しようとすると, 物理学的な手法を取り入れることが必要となる. 古典的な例としては, 血流力学があげられる. その中でも最も基本的なものは, 血液の流れとその駆動力と血流抵抗に関するボアジーユの法則である. 現在では, 測定系の進歩に伴って, 種々のデータが提供されている. そこで, 理想流体の理論は現実的に複雑な系に適合するように, 改変されつつある. 一方, 循環系は, 単純化して考えると, 結局はポンプと導管と物質交換系からなっているので, 心臓と動静脈と毛細血管系についての解析を行えば, 大体の定量的な把握は可能となる. 心臓の力学については, 筋肉の仕事が血液の流れの動的なエネルギーに変換されて, 酸素および各種物質の輸送と言う生理的な働きを行うことを理解しなければならない. ところで, それらは輸送されるのが目的では無く, 毛細血管の所で交換され, 細胞に到達して利用されることが目的であるので, 透過性の問題も十分検討することが, 現象の理解を深める上で, 大切である. |