Abstract | 副腎皮質ステロイドは体内恒常性を維持するために必須なホルモンであり, あらゆる臓器や組織に影響を及ぼしている. 動物の副腎を摘出すれば, 心拍出量や血圧が低下し, 侵襲が加えられれば容易に循環の虚脱をおこして死亡することはよく知られている. 一方副腎皮質ステロイドを動物やヒトに投与した場合の循環系への影響は様々である. 副腎機能が正常である動物やヒトでは, ほとんど循環系に変化は見られない. 一方強い侵襲下では, 循環系を強化するとの報告が多い. ショックにおいても評価が異なり, 実験的モデルのうち, 出血性ショックでは影響は明瞭ではなく, エンドトキシンショックで血圧の上昇と生存率の向上が報告されている. 副腎皮質ステロイドのうち糖質ステロイドの方が鉱質ステロイドの方より循環系への作用は強く, 1970年代からは糖質副腎皮質ステロイド(以下ステロイドと略す)がショック治療の目的で臨床使用されるようになった. しかしながらステロイドの臨床評価は揺れ動いた. Sambhiら, Lozmanら, Wilsonらは敗血症性ショック患者で大量投与が心拍出量が増加すると報告したが, Loebら, Shoemakerらは否定した. ステロイドの作用機序についても多くの仮説が提出されている. |