Abstract | 当部門は, 昭和36年に東京大学に医学部附属医用電子研究施設が設置されると同時に発足した比較的歴史の浅い研究部門である. 発足当時から, その研究目的は医用電子と生体工学(いわゆるME)の領域に向けられてきたが, この30年の間にMEにも様々な発展や展開があった様に, 当部門の研究内容にも大きな変化があった. 本文では, 過去の変遷には触れず, 現状のみの紹介にとどめたい. 現在の研究テーマを大ざっぱにまとめると, 血液循環系の機能と形態に関する生体工学的アプローチと言うことが出来る. 個々のテーマを列挙すると, 1)毛細血管網を含めた血管系の構築と機能に関する最適モデルによる理論解析と, その発現機序についての生理学的研究 2)毛細血管壁を介する物質交換機能の生体顕微鏡法による直接計測とその理論解析 3)培養細胞法と分子生物学的アプローチを用いた血管内皮細胞機能の分析(主として流れに対する内皮細胞のバイオメカニクス)などである. 1)に関しては, 既に我々は, 頸動脈など中程度の動脈の内径が血流の慢性的変化に対し, 壁ずり応力(wall shear stress)を一定に保つ様な適応性変化を起こすこと(Am.J, Physiol, 237, H14-H21, 1980), 又これが血管分岐の最適モデルである最小仕事モデル(Murray, 1926)を満たす生理学的発現機序であることを示している. |