Abstract | 「1. はじめに」核磁気共鳴現象を生体計測に応用すると無侵襲・非破壊的にしかも複数のパラメータを同一試料に対して経時的に測定できる. 測定対象核としては水や脂質の情報を反映する1Hが感度の高さゆえに測定し易くしばしば用いられるが, 現在ではやや感度は劣るものの, 細胞内pH, クレアチンリン酸やアデノシン三リン酸の濃度を測定できることの重要性から31Pが日常的に測定されている. さらに23Naをはじめとする他序にも応用範囲が広がりつつある. NMRによって測定できる興味ある生理的パラメータとしては, 細胞内pHや各種リン化合物の濃度, NaイオンやCaイオン濃度をあげることができる. これらはいずれも1Hに比べれば感度が低いために測定が困難であったが, 超伝導磁石を用いたパルス・フーリエ変換NMR装置の出現により脚光をあびることとなった. 「2. 測定原理」静磁場中におかれた原子核はその磁気量子数に従ったエネルギー準位の分裂(ゼーマン分裂)を起こす. この分裂した準位間のエネルギー差に相当する電磁波の吸収・放出を観測するのがNMR分光法の基本原理である. 準位間のエネルギー差は, 核種に固有であるので, ある核を測定する際に他の核が妨害となることはない. |