Abstract | 「はじめに」Holter心電図の普及などにより, 無症候性心筋虚血(silent myocardial ischemia:SMI)は狭心痛を伴う虚血(API)より圧倒的に多く, 全虚血の約3/4を占めることや, 虚血性心疾患の予後に重要な意義をもつことは現在ではよく知られた事実である. 心臓移植後の除神経心や, PTCA中に狭心痛の生じる前に心電図に現れる虚血性変化にみられる医原性のSMIなども含め, その存在がより身近となった今日, 虚血性心疾患の治療目的やその指標はもはや狭心痛のコントロールのみにとどまるのではなく狭心痛のあるなしにかかわらず虚血全体(total ischemic burden)が予後に与える影響を正確に評価し行われる方向へ変化しつつある. 本稿では, SMIと冠動脈バイパスなどの外科治療との関係について概説する. 「I. 無症候性心筋虚血の定義」冠動脈造影による冠動脈病変あるいはスパスムを有する症例で狭心痛を伴うことなく生じる客観的虚血所見(心電図上の有意の一過性ST偏位, タリウムシンチでの再分布, 運動負荷により生じる局所壁運動異常など)が, 無症候性心筋虚血と定義されている. |