Abstract | 「要旨」胸部大動脈瘤37例の術中管理と術中・術後合併症をretrospectiveに検討した. 上行・弓部大動脈瘤の18例中, 術中合併症は大量出血3例(17%), 心筋梗塞2例(11%)であった. 下行大動脈瘤19例では, 術中ほぼ全例に遠心式ポンプを用いた左心バイパスを施行し, 血行動態は安定し, 出血も少なかった. 緊急手術は11例(30%)で, 部位別には上行・弓部大動脈瘤9例(82%), 下行大動脈瘤2例(18%)であった. 緊急手術11例では, 腎不全2例(18%), 術後出血(含 DIC)3例(27%), 脊髄対麻痺2例(18%)が発生し, 5例(46%)が死亡した. 今回の検討で, 1)下行大動脈瘤手術では, 血行動態, 血液凝固能の結果からみて, 遠心式ポンプを用いた左心バイパス法が, 補助循環として有用であること, 2)緊急手術の合併症発生率と死亡率は高く, 術中術後には, 血行動態のみならず, 諸臓器の保護を行なうことが必要とわかった. はじめに胸部大動脈瘤手術は, 手術侵襲が大きく, いろいろな臓器障害が合併しやすい. また, 術前合併症をもつ患者も多く, 病型により手術の補助手段も異なり術中管理に注意を要する, われわれは過去4年間に経験した胸部大動脈瘤手術37例について, 術中の管理法や術中・術後合併症をretrospectiveに検討した. |