Abstract | 「1. リゾリン脂質の構造と特徴」リゾリン脂質は, 膜を構成するリン脂質から, ホスホリパーゼA1(PLA1), あるいはホスホリパーゼA2(PLA2)によって, 脂肪酸が一つはずれてできる(図1). ホスファチジルコリン(PC)は膜を構成するリン脂質の中で, 最も多く存在するものの一つである1). 従って多く存在するリゾリン脂質として, リゾホスファチジルコリン(LPC)が考えられる. 生理的状態であれば, 生成されたLPCは再び脂肪酸が結合されてPCにもどる(再アシル化)か, またはLysophospholipaseによってさらに脂肪酸がはずれて(脱アシル化), グリセロホスフォリルコリンに変わる(図2). 従って, 生理的状態ではLPCの代謝は速い. しかし心筋組織が虚血に陥ると, LPCの再アシル化に必要なATPが減少してしまうためにacyl CoAの生成が低下する2). また同時に, LPC acyltransferaseが抑制されてしまう2). さらに虚血の時にはLysophospholipaseも抑制されるので2), LPCの蓄積はさらに増強される. 事実, LPCは虚血心筋組織中に蓄積する3), 4), 5). |