Abstract | 「心不全の病態生理」心不全の定義は, 《静脈還流が正常で十分な心室充満圧があるにもかかわらず, 心臓が身体の代謝需要を満たす血液の駆出をなし得ない状態》とされている. この定義はあくまでも生理的立場に基づくものであり, 心不全の客観的, または, 絶対的な診断基準を明確にするものではない. 心不全は4つのtypeに分けられる. Right heart failureとleft heart failureで, 各々にbackwardとforward failureがある. 実際の心不全患者の麻酔に当たっては, 個々の症例の基礎疾患と心不全の誘因を明らかにすることが重要である. この観点に立つと, Schlantの病因分類が臨床的に有用である(表1)1). この分類によると, 心不全の基礎疾患は, (A)機械的異常, (B)心筋の異常, (C)不整脈の3群に分けることができる. また, 心不全の基礎疾患の頻度は, Framingham Study2)によると, 高血圧と虚血性心疾患が多く, 弁膜症は全体の20%以下である. さらに, 心不全の誘因は表23)に示したが, 通常その基礎疾患があり, 代償された状態に何らかの誘因が加わって発症する. 従って, 術前評価や治療に当たっては, 常に誘因が何であるかを念頭におく必要がある. |