Abstract | 「はじめに」1981年, de Boldら1)はラットの心房抽出物が著明なナトリウム利尿作用, 降圧作用を有することを初めて報告した. ついで1984年, 寒川, 松尾らにより, ヒト心房から一群のペプチドが分泌され, これがナトリウム利尿作用を有することが証明され2,3), 心臓も一種の内分泌器官であることが明らかとなった. 彼らはこれをヒト心房性ナトリウム利尿ペプチド(以下hANP)と命名した. このペプチドにはα, β, γの3種類のサブタイプが存在すること明らかとなり, ヒト血中にはαタイプ(α-hANP)が主として存在する. α-hANPは, 28個のアミノ酸で構成され(図1), その後の研究により, ナトリウム利尿作用4), 血管拡張作用5), レニン・アンギオテンシン・アルドステロン系に対する抑制作用6)など種々の生理作用を有することが明らかとなった. 心不全患者では, 心筋収縮力の低下に伴い心拍出量が低下すると, 末梢静脈圧, 心房圧の上昇(前負荷の増大)や交感神経の活動亢進による末梢動脈の収縮(後負荷の増大)がその代償機序として認められる. さらに, レニン・アンギオテンシン・アルドステロン系が動員され, 水分, ナトリウム貯留が認められる. |