Abstract | 私は, 1993年にシドニーのセント・ヴィンセント病院, 1994年, 1995年に同じくシドニーのセント・ジョージ病院の心臓胸部外科において, 臨床に従事する機会を得たので, これらの病院を紹介すると共に, オーストラリアから視た日本の心臓外科の問題点と今後について私見を交えて報告する. セント・ヴィンセント病院は, シドニーのダウンタウンからそれほど遠くはないダーリングハーストという地区に位置している総合病院である(写真1). ここの心臓胸部外科部門では, 冠動脈バイパス術を中心とする後天性心臓手術を年間約1,400例, 一般胸部手術を約150例行っている. また, この病院は, ニュー・サウスウェールズ州で唯一心臓移植を行っている病院でもあり, 心臓移植, 心肺移植, 肺移植併せて年間約90例行っている. オーストラリアでの心臓移植は, 1983年ここセント・ヴィンセント病院で始まった. 執刀を行った, 当時の心臓胸部外科のチェアマンであったヴィクター・チャンは, その業績で, オーストラリアで“時の人”となり, その年のオーストラリアン・オブ・ザ・イヤーに選ばれている. |