Abstract | 特発性の拡張型心筋症の病因は未だ特定されておらず, 従って, その根本的治療法も確立されていない. 心不全に対する対症的強心療法, β遮断剤投与, ACE阻害剤投与などによる後負荷軽減療法などのあらゆる内科治療に抵抗し心不全状態が進行する末期拡張型心筋症に対しては, 置換外科である心臓移植のみが今日唯一の治療手段, 救命法である. 移植治療が定着した諸外国ではドナー不足が最も深刻な問題となっており, 補助人工心臓(LVAD)はドナー心臓がavailableとなるまでの循環維持, つまりは唯一の延命手段として盛んに臨床使用されている. このようなLVADのブリッジ(橋渡し)使用は, 当初はせいぜい1ヵ月の補助期間であったものが, ドナー不足の一層の深刻化, 補助心臓そのものの耐久性の向上などがあいまって現在では数ヵ月の補助が日常的となりつつあり, 1年前後の長期補助も決して稀ではない状況にある. 近年, このような長期補助循環症例の中に, 心機能が顕著な回復を示し, LVADからの離脱が可能となり離脱後も比較的良好な心機能のもとに退院し生存している症例が存在することがドイツなどから報告され, 日本の新聞紙上でも注目を集めているのは周知の事実である. |