Abstract | 「はじめに」近年, 基礎的な研究成果をふまえて, 急性心筋梗塞や不安定狭心症の極期に血栓溶解療法, 経皮的冠動脈形成術などの冠血行再開をねらった再灌流療法が積極的に施行されるようになった. それとともに, 発症早期に血行が再開された症例のうち, 数週以上の経過をたどりながら心筋収縮能の回復を示す例のあることが分かってきた. この可逆性に遷延性収縮能低下を示す病態は仮死心筋(stunned myocardium : SM)として, 今日では基礎のみならず臨床においても広く注目されている. 本稿ではこの仮死心筋を中心に概説する. 「仮死心筋の概念」通常不可逆的な心筋細胞障害をきたさないとされる比較的短時間の虚血後であっても, 冠血流の再開により心筋の収縮機能は直ちに虚血前のレベルに復することができず, 回復に数時間ないし数週間を要する. BraunwaldとKloner1)は, この可逆性の遷延性心筋機能低下の状態にある心筋を仮死心筋と概念づけた. 仮死心筋の程度と回復に要する時間の長さは虚血の強さと虚血時間の長さに規定され, 実験的には5分間の完全冠閉塞時では最長約60分, 15分虚血では6時間以上とされ, 報告によっては, 1週間以上を要する. |