Abstract | 循環と呼吸は, 全身組織に酸素を送る両輪である. おのずと, 両者は機能的, 解剖学的, 機械的, また内分泌的にも密接な関係をもっている. 循環と呼吸の両輪が健常でなくては, 全身の酸素化もおぼつかない. 循環と呼吸の相互作用を理解することなしには, 呼吸循環器疾患の病態生理を理解したり, 理論だった治療法を施行することはできない. 心臓大血管と肺は胸腔内に位置している. 自然の呼吸や自発呼吸による胸腔内圧変化や, 肺循環系に対する影響により, 静脈還流だけでなく, 心室からの駆出も影響を受ける. 呼吸に伴う血圧変動を解析すれば, 静脈還流量, ひいては循環血液量の十分さの推定が可能になる. 陽圧呼吸により心臓の前負荷と後負荷の軽減が起き, さらに血液酸素化の改善や, 血管収縮を起こすような高二酸化炭素症が改善されることにより, 血行動態が改善される. 心不全患者において, 陽圧呼吸が治療的意味をもつ1つの理由である. 逆に, 高い気道内圧により静脈還流量が減少したり, 心室中隔の左室内腔への張り出しや, 心室コンプライアンス低下により, 心拍出量減少や低血圧が起こる場合もある. |