Abstract | 「はじめに」塩酸キナプリルは, 米国ワーナー・ランバート社で開発された, SH基を有さないACE阻害薬である. 世界64ヵ国で販売されており, 日本では吉富製薬株式会社が取り扱っている. 我が国では健康保険上, 適応症は高血圧のみであるが, 海外60ヵ国においては他のACE阻害薬同様, 心不全治療薬としても承認されている. 特に本剤は, 組織移行性を高める3-isoquinolyl基を有するため, 加水分解された活性物質のキナプリラートが, 血管壁などの標的臓器において持続的なACE阻害作用を発揮する作用が強いのが特徴である. 本稿では, 塩酸キナプリルの薬理作用, 副作用等とともに, 強力な組織移行性がもたらす特徴について概説する. 「薬理作用」塩酸キナプリルは, 分子式C25H30N2O5-HCl, 分子量474.98, 化学名(+)-(S)-2-[(S)-N-[(S)-1-ethoxycarbonyl-3-phenylpropyl]alany1]-1, 2, 3, 4-tetrahydroisoquinoline-3-carboxylic acid monohydrochlorideの化合物である. |