Abstract | 「はじめに」現在心筋においては少なくとも8種類のカリウムイオン(K+)チャネルの存在が同定されているが1), そのうちの主なものとその主たる役割を挙げると表1のごとくとなる. 心筋虚血, 特に急性心筋梗塞においては, 虚血部心筋からのK+の流出により間質のK+濃度[K+]oが10分以内に正常(3.5〜5.5mM)の2〜3倍に増加する. そのため静止電位の決定に最も重要な内向き整流K+(IK1)チャネルのK+透過性に変化がなくてもK+の平衡電位が変化し, 膜電位が脱分極する結果, 興奮の伝導に重要なNa+やCa2+の内向き電流も不活性化により減少してしまう. また虚血部の自律神経末端から放出されるnoradrenalineは遅延整流K+(IK)チャネルのうちの遅いコンポーネントであるIksを増加させ, 一過性外向き電流Itoを減少させる. またNa, Kポンプの減弱により細胞内Na+濃度が増加するので細胞内Na+によって活性化されるK+電流, Ik, Naが活性化する. このように虚血では外向き電流であるK+電流と内向き電流であるNa+, Ca2+電流が大きく変化するので, 興奮の伝導速度や不応期が変化してリエントリーによる不整脈が発生し, また細胞内Ca2+濃度の増加により撃発活動による不整脈が誘発される. |